今朝、夫に届いたメールはEranからのものだった。
Eranとは数年前ベルリンで出会った。私達夫婦はベルリンのアーティストレジデンスに滞在し、別に、通りに面した大きな窓とドアがあるギャラリースペースも探して、そのショーケースのような箱の中で私達はフェルトを作ったり、壁に画像を投影して絵を描いたりしていた。何度も前を通りかかった末、近所の子供たちの後ろから遠慮がちに、夫の手招きに応じてようやくEranはそこに入って来た。 私達の借りたギャラリーは旧東ドイツ側の、アフリカからの移民がたくさん住む地域で、地価が安いからアーティストがたくさん住んでいるようだった。目の前の通りは、なぜか名前をスウェーデン通りといった。Eranだけじゃなくて、そのショーケースを挟んで見たり見られたりしながら、ドアをノックしてくれるのはきまって絵描きだったりフォトグラファーだったりした。 Eranはイスラエル人で、もちろんユダヤ教徒で、それからフォトグラファーだった。私は遠慮がちに話す人にはすぐに好感をもってしまう。控えめなだけでなくって、根幹が熱く、しっかりと強そうな感じも、話していると伝わってくる。彼は近くのアパートに住んでいて、以前のフラットメイトがスウェーデン人だったらしく、北欧の人の酒癖の悪さとか、素朴さとかもなじみの感じだった。 レジデンスに戻り、ふと手にした薄い、ベルリンに住む外国人向けフリーペーパーの表紙の、モノクロ写真。ちょっと照れたような表情のおじさんが手でそれをカメラレンズからさえぎろうとしている。カメラマンの呼吸を感じるような写真の、クレジットはEranだった。 Eranはユダヤ教の祭日に私達をアパートに招待してくれた。ほかに彼の彼女とか、友人とかも来る。伝統の料理をふるまってくれるらしい。私は日本人らしく、神も仏もキリストも一緒と、喜んで出かけた。 私は宗教に傾くことはないけど、そのまわりにある、古くから継承されているもののデザインは一つのスタイルとして面白いと思う。小さくて素敵なディティールと、いぶされた金属とかすり減った木の質感が、触れるものの気持ちを鎮める気がする。 壁には、彼の捉えた写真。 彼の故郷、イスラエルの写真のほかに、世界各国を旅して捉えた四角い世界には、圧倒的な光や温度や湿度や時間に、投げ出されているEranを想像できる。私もその一瞬を浴びる気がする。 3ヶ月のベルリン滞在を終えてフィンランドに帰国する私達に、Eranは一枚のCDを贈ってくれた。彼の作品を収めたポートフォリオだった。彼の世界は、好きにならずにいられない、もっと見たい、ずっと見ていたいと思わせるような・・・ ちょっと酒に酔う感じに似ている。 彼の最近の仕事がアップされた、というメール。 ここに彼の世界がある。 左の写真は、そのショーケースのような、私達が制作していたスペース。もう5年前のこと。。
by aikafeltworks
| 2009-07-05 16:10
| 思索・散策
|
カテゴリ
Aika Felt Works私がつくっているもの Co-design project お知らせ・リポート・ショップ 物作りマネジメント勉強会 フィン語でムーミンを読もう フィンランドで妊娠出産 思索・散策 Shop
フィンランド在住のデザイナー、浦田愛香による手作りのフェルト製インテリア雑貨のお店。フィンランドからお手元に直接お届けします。 ☆Aika Felt Works 商品取り扱い店☆ Comfort Q (阪急百貨店のインテリアショップ 大阪) FIQ 名古屋店 北欧雑貨 Kirpputori (東京五反田) WEBO(神戸市中央区) Artisaani (Helsinki, Finland) OKRA (Helsinki, Finland) momono (Helsinki, Finland) Taito shop Pirkanmaa (Tampere, Finland) mainoa DESIGN SHOP (Rovaniemi, Finland) KORUNDI museum shop (Rovaniemi, Finland) CityHotel Art and Design shop (Rovaniemi, Finland) 最新の記事
Twitter
ライフログ
参考資料
その他のジャンル
記事ランキング
画像一覧
| |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ファン申請 |
||